HARLEY-DAVIDSON FXDF 2009 / P/N 57338-08  |  PART 1 — 材料編

材料編

何を使い、何を使わないか。買い物と準備はこの章で完結します。

この章の内容

この作業の前提。ポリカのハードコートは「部分的に削る」ができません。傷取りのために一部を研磨すると、その部分だけコートが抜けてムラになります。削ると決めたら面全体を均一に削り、最後に必ずコーティングで新しい保護膜を作り直す。これが唯一まともに仕上がる道筋です。

1-1. 手配状況の一覧

価格は2026年9月時点の目安。為替・在庫で変動します。

分類品名用途状態
研磨材コバックス スーパーアシレックス/スーパーバフレックス φ75mm(K-800〜K-3000)機械研ぎの本体。詳細は1-2購入済 ¥2,875
研磨材耐水ペーパー シート 12枚セット
#800/#1200/#1500/#2000/#3000/#5000 各2枚・230×93mm
エッジ・穴周囲の手研ぎ購入済
工具BLACK&DECKER SX3000(12V・2速)水研ぎとバフ掛け所有
工具19点 80mm ポリッシャーセット
サンディングパッド76mm・六角軸アダプタ・平型スポンジ×6ほか
パッド台座とバフ購入済
工具インターフェースパッド φ75mm・厚さ10mm水研ぎの曲面追従購入済
工具スポンジブロック(青/黒2層・約12cm)手研ぎの当て板所有
研磨剤ソフト99 液体コンパウンド 3000/7500/9800(単品ボトル)ドリルでの本番磨き。3段構成所有
研磨剤ソフト99 09193 トライアルセット(3000/7500/9800)手作業用所有
コート3M ヘッドライト用クリア コーティングワイプ 39173
シート4枚入り
仕上げの保護膜購入済
組付EPDMゴムワッシャー/EPDMスポンジ・フェルトテープ割れの再発防止入手済
消耗品マスキングテープ・霧吹き2本・中性洗剤・マイクロファイバー・バケツ2個・毛布・油性ペン・LEDライト養生・洗浄・判定1-7を参照

買い物は完了しています。残るのは1-7の消耗品の在庫確認だけです。

1-2. 研磨材

番手の進め方

K-800→K-1000→K-1500→K-2000→K-3000→3000→7500→9800→コート

コバックスの色分け番手でそのまま繋がります。飛びがなく、途中で別ブランドを混ぜないので目の残りが読みやすい構成です。番手は絶対に飛ばさない——K-1000からK-2000へ跳ぶと、前の傷が消えず最後に必ず出てきます。

番手製品(色)枚数役割
K-800スーパーアシレックス レモン10枚主戦場。爪が引っ掛かる傷の切削
K-1000スーパーアシレックス ライム5枚K-800の目を消す
K-1500スーパーアシレックス ピーチ5枚中間
K-2000スーパーバフレックス グリーン5枚仕上げ前
K-3000スーパーバフレックス ブラック10枚目消し。ここで半透明に戻る

K-800が先に尽きます。ポリカは目詰まりが早く、一番長い工程でもあります。減りが早いと感じたら早めに追加を。ここで止まると作業全体が止まります。

なぜコバックスなのか

スーパーアシレックスは、メーカー・販売店の説明でポリカーボネートなどの樹脂研磨において返りバリ・毛羽立ちの発生を抑えられること、柔らかな素材のため深いスクラッチ傷が入らないことが明記されています。今回の相手はポリカで、避けたいのは深い傷。狙いが一致しています。

手研ぎ用シートの使い分け

230×93mmのシートをスポンジブロックに巻いて使います。エッジ、マウント穴の周囲、帯の下など、機械を入れない場所の担当です。

1-3. 工具

BLACK&DECKER SX3000(12V)

低速0〜400rpm/高速0〜1,300rpm、チャック能力1.0〜10mm、クラッチ24段、最大トルク21N·m。

全開でも1,300rpmなので、ポリカが熱で波打つ回転域に物理的に届きません。回転数に神経を使う必要がないのは大きな利点です。ただし変速ダイヤルはなくトリガーの引き加減だけなので、ギアで作り分けます(運用は作業編2-4)。

コード式ドリルはこの作業に使いません。水を大量に使う工程なので感電します。例外なし。

パッドとバフの構成

19点セットにサンディングパッド76mm+六角軸アダプタが同梱されているので、台座は追加不要です。六角軸なのでチャックで滑りません。MAX 15,000rpm表記なので回転数も余裕。

品目判定
サンディングパッド76mm+六角軸アダプタ必須。ペーパーディスクとバフの共通台座
インターフェースパッド φ75mm・10mm厚水研ぎで必須。コンパウンド工程では外す
平型研磨スポンジ ×6コンパウンド工程の主力。3000/7500/9800の3枚を専用に固定
波型研磨スポンジ ×5予備。今回は平型で足ります
ウールパッド ×2使わない。ポリカには切削力が強すぎます
研磨パッド(不織布)×3使わない。目が粗く、傷を入れます
円柱型アダプタ使わない

径のズレは気にしなくていい

パッド76mm > ペーパー75mm という関係はこの向きが正解です。パッドが1mmはみ出していれば、硬い台座の縁がシールドに直接触れません。逆だと、はみ出した部分が支えを失って「ヒレ」になり、回転でバタついて深い傷を作ります。目安はパッドが同径〜プラス3mm。マイナスは避ける。

貼るときは中心をきちんと合わせてください。貼ったら回して縁のブレを目視確認。偏芯は振動になり、振動は当たりムラになります。

インターフェースパッドの厚みについて

10mmは曲面追従と圧の伝達のバランスが取れた標準的な厚みです。13mm以上は腰が抜けて圧が伝わらず、「削れないから押す」→逃げが限界に達した瞬間に食い込む、という事故につながります。K-800で削れが悪いと感じたら、押すのではなくパッドを外す。平らに近い帯の下なら無しで構いません。

スポンジブロック(青/黒2層・約12cm)

手作業用の脇役として有用ですが、視界部の主力には向きません。面の長さが12cm近くあり、シールドは横方向に強く湾曲しているので、横向きに当てると両端だけが接地して中央が浮きます。

迷ったときの原則:ポリカ相手では柔らかい方が正解。硬すぎると感じたら、その感触を優先してください。

1-4. コンパウンド

ソフト99の単品ボトル 3000(STEP.1 キズ消し用)/7500(STEP.2 極細用)/9800(STEP.3 超鏡面用)が3本とも揃いました。

7500が加わったことで3段構成になります。3000→9800の2段飛びより、間に1段あった方が最後の仕上がりが素直になります。ポリカは柔らかく深い傷が入りやすいので、緩やかに繋ぐ利点が特に効きます。追加コストは片面あたり20〜30分です。

段製品バフ役割
1液体コンパウンド 3000(STEP.1)硬めK-3000の目を消す。切削力が要る
2液体コンパウンド 7500(STEP.2)中3000の目を消す。透明感が出始める
3液体コンパウンド 9800(STEP.3)柔らかめ最終仕上げ。撫でて艶を出す

バフは3枚を番手専用に固定し、裏に油性ペンで「3」「7」「9」と記入してください。使い回すと最終工程で粗い粒を引きずり、永久に曇りが取れません。

番号は被るが別物

バフレックスのK-3000(ペーパーの粒度)と、ソフト99の3000(仕上がり基準)は別のスケールです。「K-3000で研いだ後に3000では意味がない」とはなりません。

石油系溶剤が入っている

成分は研磨材・界面活性剤・石油系溶剤。塗装面用の製品で、ポリカ前提ではありません。同種のコンパウンドはヘッドライト磨きで日常的に使われているので過度な心配は不要ですが、2点だけ守ること。

シリコーンは入っていないので、コーティング前の密着不良については心配ありません。

トライアルセットは手磨き専用

ソフト99はポリッシャーを使う場合は単品ボトルを使うよう案内しています。付属スポンジも手持ち用でドリルには付きません。トライアルセットはエッジと穴周辺の手作業用に回してください。

1-5. コーティング剤

3M ヘッドライト用クリア コーティングワイプ 39173(シート4枚入り)を使用。液を染み込ませたシートで拭くだけで、ムラが出にくい定番品です。持ちは半年〜1年。

開封後の保存が効きません。シートの溶剤が揮発するため、開けたら使い切る前提です。研磨と乾燥が完全に終わり、その日のうちに塗り切れる段取りになってから開封してください。4枚入りで両面ぶんは枚数が微妙なので、表面を優先し、裏面は薄めに配分を。

撥水剤について

研磨した面はコート前だと水を吸って広がり、視界が悪化します。コーティングの撥水性能で改善しますが、ガラス用の撥水剤の追加は避けてください。

純正の指定。H-Dのインストラクションシートには、ポリカーボネート製ウインドシールドに承認された撥水剤としてHarley-Davidson Windshield Water Repellent Treatment(品番 99841-01)が明記されています。同時に「レインシーティング製品は表面を曇らせるので使用禁止」とも書かれています。

将来の選択肢

1年後に落ちてきたら、ホルツ タフウレタンなどの2液ウレタンに切り替えれば数年持ちます。初回にウレタンを避けたのは失敗リスクのためで、一度この作業を通した後なら判断が変わっているはずです。手順は作業編2-9。

1-6. マウント部品

クラックが入った原因は、ここのゴム部品の硬化と締めすぎです。研磨より、じつはこちらの方が重要です。

構造の確認。このキットはウェルナット式ではありません。フォークスライダーをダイキャストのレバークランプで掴み、シールド自体は金属ブレースにネジ+ゴムワッシャーで挟み込む方式です。

純正部品番号(キット57338-08の構成)

品番品名数量場所・役割
58152-96Washer, rubber, black(EPDM)4シールドの穴とネジの間。今回の本命。潰れて薄くなるとネジ頭がポリカに直接当たり、振動と締付力が集中する
58052-78Tape, horizontal2横ブレースとシールドの間の保護テープ。帯の位置=クラックの位置と一致
58417-77Tape, vertical2縦ブレース用の同上
57197-05Gasket(クランプ用ゴム)8クランプがフォークスライダーを掴む面。1クランプに2枚
58790-04Hardware kit, windshield mount4セットショルダーボルト+カップワッシャー+皿バネ2枚。個々の部品は単品販売なし
2921AボタンヘッドTorx #12-24 × 5/8"7ブレース固定
2452同 #12-24 × 13/16"2同上
7651アコーンナット #12-24(クロム)9同上

出典:Harley-Davidson インストラクションシート J03588。入手はH-Dディーラーに品番指定、eBayのOEM単品、Dennis Kirkなど。

代用品の選定条件

汎用品で問題なく代替できますが、素材の選び方だけは間違えないでください。ゴムやテープの中の可塑剤・オイルがポリカに移行すると、応力と相まってクラックを進行させます。

ゴムワッシャーの寸法

ネジは#12-24(呼び径およそ5.5mm)なので内径6mm、外径13〜16mm、厚さ2〜3mm。薄すぎると緩衝しません。純正が潰れて薄くなっていたことが、今回の割れの一因です。

テープ

純正のこれは金属ブレースとポリカが擦れるのを防ぐ保護・緩衝用で、貼り合わせるものではないので片面テープで足ります。EPDMスポンジテープ(耐候性が高く屋外向き)かフェルトテープ、厚さ1〜2mm。

1-7. 消耗品と作業環境

ここが不足すると作業が止まります。着手前に在庫を確認してください。

品目数量用途と補足
マスキングテープ幅18〜24mm帯の養生。塩ビテープは不可、和紙テープを
霧吹き2本1本は水、1本は中性洗剤を数滴入れた水。後者が目詰まりを劇的に減らします
バケツ2個洗い用とすすぎ用。番手を替えるたびに研磨粉を完全に流すため
マイクロファイバークロス10枚以上番手ごとに使い分け。使い回すと粗い粒を持ち込みます
毛布・バスタオル2〜3枚作業台。シールド全面を面で受ける
中性洗剤—食器用で可。脱脂もこれで(アルコール厳禁)
油性ペン(細字)1本クラック先端の印、バフの番手記入
LEDハンディライト1本透かし確認。研ぎ残しの判定に必須
保護具—防水手袋、保護メガネ。コンパウンドのミストが目に入ります
予備バッテリー2本1本15〜20分。交互に回す

作業環境の条件。日陰・無風・低湿度。直射日光下は論外です(熱と、コンパウンドの乾き)。埃が舞う場所も避ける——コーティング工程で刺さります。気温15〜25℃が理想で、低温だとコーティングの乾燥が進みません。

1-8. 使ってはいけないもの

ポリカは有機溶剤に非常に弱く、ガラス用のケミカルを流用すると一気に白濁します。今回はすでにクラックがある個体なので、溶剤は特に危険です。

絶対に使わないもの

クラックを「消す」方法は存在しません。溶剤による溶着は進行させるだけ、瞬間接着剤は蒸気でポリカを白化させ、エポキシは亀裂内部に入らず補強になりません。できるのは進行を止めることだけです。