テスター診断:4灯とも点灯する場合
4灯すべて点灯しているなら、まず「完全断線」ではなく、 LEDの負荷がTSSM/HFSMの判定閾値付近になっている/接触抵抗や電圧降下で一時的に負荷が小さく見える 状態を疑います。
B1121・B1122がクリア後も再発しているので、左右を別々に測定し、 左だけ異常、右だけ異常、左右共通異常のどれかを切り分けます。
用意するもの
デジタルテスター
- DC 20V程度を測れるもの
- 抵抗/導通ブザー機能
- MIN/MAX機能があれば便利
あると便利
- 細いバックプローブ
- ワニ口クリップ
- 長めの測定リード
- 接点クリーナー
測定前:コード再現を左右に分離する
| 結果 | 意味 | 次の測定 |
|---|---|---|
| 左操作でB1121だけ | 左側の負荷/配線問題が中心 | 左前・左後を重点測定 |
| 右操作でB1122だけ | 右側の負荷/配線問題が中心 | 右前・右後を重点測定 |
| 左右それぞれで対応コード | 左右ともTSSM/HFSMが負荷不足と見ている可能性 | 4灯比較+共通電源/アース |
| 片側しか操作していないのに両方 | 左右共通部、モジュール側を強く疑う | 共通電源/アース、モジュールコネクタ |
手順1:バッテリー電圧を基準値として記録
テスターを DC V に設定します。 赤プローブをバッテリー+、黒プローブをバッテリー-へ接続します。
| 状態 | 記録する値 | 目的 |
|---|---|---|
| イグニッションOFF | ____ V | 静止時の基準 |
| イグニッションON | ____ V | 灯火負荷をかけた基準 |
| エンジン始動・アイドル | ____ V | 充電中の基準 |
| 約2,000 rpm | ____ V | 充電系の状態確認 |
ここでは絶対値だけで故障判定せず、このあと測る「ウインカー端子の電圧」と比較するための基準値にします。
手順2:各LEDへ来ている電圧を測る
- テスターを DC V にする。
- 黒プローブをバッテリー-端子へ固定する。
- 赤プローブを、測るLEDウインカーの点滅側+線へバックプローブする。
- その側のウインカーを作動させる。
- 点灯している瞬間の最大電圧を記録する。MIN/MAX機能があればMAXを使用。
- 左前・左後・右前・右後の4灯を同じ方法で測る。
| 測定場所 | 点灯時電圧 | バッテリーとの差 |
|---|---|---|
| 左前 | ____ V | ____ V |
| 左後 | ____ V | ____ V |
| 右前 | ____ V | ____ V |
| 右後 | ____ V | ____ V |
手順3:アース側の電圧降下を測る ― 最重要
「点灯しているからアースは正常」とは限りません。 LEDは小電流でも点灯できるため、接触抵抗が増えていても見た目では分からないことがあります。
- テスターは DC V のまま。
- 黒プローブをバッテリー-へ接続。
- 赤プローブをLEDウインカーのアース端子へ接続。
- ウインカーを作動させ、点灯中の値を読む。
| 測定結果 | 判断の目安 |
|---|---|
| ほぼ0 V | アースは良好な可能性が高い |
| 0.1~0.2 V程度 | 比較対象として左右差を見る |
| 0.2 Vを大きく超える | アース端子・コネクタ・配線の抵抗増大を疑う |
| 0.5 V以上 | 明確な異常候補。接点やアース接続を重点確認 |
0.2 V / 0.5 Vは一般的な車載電装の診断目安で、2009 FXDFのHarley-Davidson公式規定値として示した値ではありません。 左右4灯の相対比較を優先してください。
手順4:+側の電圧降下を測る
- 赤プローブをバッテリー+へ接続。
- 黒プローブを測定対象LEDの点滅+端子へ接続。
- ウインカーを作動させ、点灯中の値を読む。
これは「バッテリーからLEDまでで、どれだけ電圧を失っているか」を直接測る方法です。
| 結果 | 判断 |
|---|---|
| 4灯とも小さく、ほぼ同じ | 供給側配線は大きな問題がない可能性 |
| 特定1灯だけ大きい | その回路のコネクタ/配線/ソケット |
| 左側2灯とも大きい | 左出力側共通部 |
| 右側2灯とも大きい | 右出力側共通部 |
| 左右4灯とも同様に大きい | モジュール入力電源・共通接続を確認 |
手順5:症状発生中に「揺すり試験」
今回のような「走行中に時々」には特に有効です。
- 車両を安全に停止・固定してウインカーを作動。
- テスターを対象LEDの電圧測定状態にしたままにする。
- LEDインサート、ソケット、ウインカー根元の配線、シート下コネクタを軽く動かす。
- 電圧、点滅速度、赤い鍵ランプに変化が出る箇所を探す。
手順6:電源OFFで抵抗・導通を確認
テスター棒そのものの抵抗を先に測る
赤黒プローブを直接接触させ、表示値を記録します。例:0.2 Ω。 低抵抗測定では、この値を差し引いて考えます。
アース線
LED側アース端子からバッテリー-または確実な車体アースまでを測定。 ただし並列回路の影響があるため、抵抗値だけで正常判定せず、手順3の電圧降下測定を優先してください。
揺すりながら導通確認
導通ブザーにして配線を軽く動かし、ブザーが途切れる・抵抗値が跳ねる箇所があれば、 芯線断線や端子接触不良の可能性があります。
最も決定力が高い追加テスト
テスター測定ですべて正常に見えるのにB1121/B1122が再発する場合、 LED負荷そのものがTSSM/HFSMの判定閾値より低くなっている可能性が残ります。
A. 純正白熱球へ一時的に戻せる場合
- B1121/B1122をクリア。
- 片側だけ純正仕様相当の白熱球へ一時的に戻す。
- その側だけウインカーを操作。
- DTCを再確認。
| 結果 | 判断 |
|---|---|
| 白熱球側だけコードが出なくなる | LEDの負荷/内蔵回路が原因の可能性が非常に高い |
| 白熱球でも同じコード | 車体配線、コネクタ、TSSM/HFSM側へ進む |
今回の症状での推奨順序
| 順位 | 測定/確認 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 左右分離DTCテスト | B1121/B1122がどの操作で再発するかを確定 |
| 2 | 4灯の点灯時電圧比較 | 特定回路だけ低いか確認 |
| 3 | 4灯のアース電圧降下 | 点灯していても存在する高抵抗アースを検出 |
| 4 | LED/ソケットを揺すりながら測定 | 「走行中に時々」と一致する間欠故障を再現 |
| 5 | 電源OFFで配線導通 | 芯線断線・端子不良を確認 |
| 6 | 純正白熱球で比較 | LED負荷か車体側かを決定的に分離 |
| 7 | 日本仕様Security Module 68923-07周辺 | 他を除外した後にモジュール/端子を調査 |
測定結果記録シート
| 項目 | 左前 | 左後 | 右前 | 右後 |
|---|---|---|---|---|
| 点灯時+電圧 | ____ V | ____ V | ____ V | ____ V |
| アース電圧降下 | ____ V | ____ V | ____ V | ____ V |
| +側電圧降下 | ____ V | ____ V | ____ V | ____ V |
| 揺すり試験 | 正常/変化 | 正常/変化 | 正常/変化 | 正常/変化 |
| 目視:消灯/ちらつき | 有/無 | 有/無 | 有/無 | 有/無 |
純正資料
- Harley-Davidson 2009 Wiring Diagrams — 2009 Dynaを含む純正配線図。
- Harley-Davidson 2009 Dyna Parts Catalog — FXDF純正ハーネス、ウインカー、Turn Signal/Security Moduleの部品構成確認。
現在の判断
B1121とB1122だけが消去後も再発するなら、「左右のウインカー出力が両方とも正常な負荷として認識されていない」可能性が高い状態です。
B1121は左ターン出力、B1122は右ターン出力に関係するDTCです。今回、左右の短絡系に相当する別DTCが出ていないこと、LED化後しばらく正常だったこと、走行中に時々ハイフラになることを合わせると、単純な配線ショートより、負荷不足・負荷補償部品の故障・接触不良を優先して調べるのが合理的です。
外付け負荷抵抗が無い場合の原因候補順位
LEDウインカー側の内蔵負荷回路 / LEDドライバ
外付け抵抗が無いのにLED化後しばらく正常だった場合、LEDユニット自体に負荷補償・ドライバ回路が内蔵されている、またはTSSMがその負荷で正常認識していた可能性があります。左右のB1121/B1122が再発するなら、LED側の経年・熱・振動による負荷変化を確認します。
日本仕様 Security Module 68923-07 とコネクタ
Harley-Davidson 2009 Dyna純正パーツカタログでは、日本仕様のSecurity Moduleとして68923-07を記載。赤い鍵ランプと左右ターン出力DTCが出ているため、モジュール本体より先にコネクタ端子・接点を重点確認します。
メインハーネス / 共通電源・アース
2009 FXDC/FXDFの純正メインハーネスは69603-08。左右両方にB1121/B1122が出るため、左右共通経路、電源、アース、モジュールコネクタを優先します。
前後ウインカーのソケット・配線
日本を含むHDI仕様の純正ウインカーは前68975-00、後68978-00。現在LED化されていても、純正ハウジング・ソケット・コネクタを流用している場合は接触不良を確認します。
モジュール本体故障
LED側、ハーネス、コネクタ、電源・アースを除外した後にモジュール本体を疑います。交換には車両側との設定・適合確認が必要になる場合があります。
2009 FXDF 純正部品の写真 ― 日本仕様を優先
日本仕様として純正カタログに明記されている部品。 黒い樹脂ケースにHarley-Davidson / Delphiラベルがあり、ラベル上に 68923-07 と表示されます。
- 実車ラベルが 68923-07 か確認
- モジュールコネクタの抜け・端子押し戻し・腐食を確認
- 水分や緑青がないか確認
- 本体交換より先に接点・ハーネスを点検
2009 Dyna純正カタログには 68921-07 = MODULE, turn signal も掲載されています。セキュリティ仕様によって使用モジュールが異なるため、実車のラベルで判別してください。
- 68921-07 と 68923-07 を外観だけで判断しない
- 必ずラベルのH-D P/Nを確認
- コネクタ形状・端子状態を確認
Harley-Davidson純正カタログではInternational Models OnlyのFXDFに 68975-00 TURN SIGNAL (HDI) を2個使用すると記載されています。
- 現在LED化されていても純正ハウジングを流用しているか確認
- ソケット/LEDインサート接点の緩みを確認
- 配線根元・ステー付近の断線を確認
International/HDI仕様の2009 FXDFでは、純正カタログに 68978-00 TURN SIGNAL ASSEMBLY, rear (HDI) が2個と記載されています。
- リア側コネクタの接触不良
- フェンダー周辺ハーネスの擦れ・挟み込み
- LED交換部と純正ソケット/配線の接続
純正ウインカーを「開けた状態」の写真
フロント:68975-00(TURN SIGNAL HDI)/ 68906-00(SOCKET ASSEMBLY HDI)/ 68976-00(LENS amber HDI)
リア:68978-00(TURN SIGNAL ASSEMBLY rear HDI)/ 68979-00(LENS amber HDI)
2009 FXDF日本仕様そのものを分解した高解像度写真は公開数が少ないため、 Harley-Davidson純正パーツカタログで2009 FXDFの部品番号を確認したうえで、 同系統の純正ブレットウインカー内部構造が分かる写真を掲載しています。 USA仕様68904-00系の写真は、日本仕様68906-00と電球/配線仕様が異なるため、 ソケット・反射板・ハウジングの構造確認用として見てください。
Harley-Davidson純正ブレットウインカー用ソケットASSYの実物写真です。クローム反射板の中央にソケットがあり、裏側から配線が出ています。
- 中央ソケット接点の焼け・変色・沈み込み
- LEDインサート側端子との接触圧
- 反射板周辺の腐食・水分
- 配線根元を動かした時の点滅変化
OEM Harleyの2線式ターンシグナル用反射板/ソケットの実物例です。中央の白い絶縁部と接点、反射板、裏側へ伸びる配線位置が分かります。
- 中央接点に黒ずみ・焼損がないか
- 接点のバネ性が弱くなっていないか
- 反射板/ソケット外周の錆・緑青
- 配線根元の硬化・折れ・断線
純正ブレットウインカーの分解図です。赤丸部分が反射板/ソケットASSYで、その前にバルブ、さらにレンズが付く構造です。
- レンズを外す
- LEDインサート/バルブを外す
- 反射板・ソケットを確認
- 必要ならソケット裏の配線まで確認
Harley純正ブレットウインカーの構造を示すサービスマニュアル系の図です。ハウジング、ソケット/反射板、バルブ、レンズが別部品として組み合わさることが確認できます。
- ハウジング内で配線が噛み込んでいないか
- 反射板が正しく座っているか
- ソケットとLEDインサートの接点にガタがないか
- レンズ内への水分侵入がないか
純正構成について
Harley-Davidsonの2009 Dyna純正パーツカタログで確認できるウインカー関連純正品は、Turn Signal/Security Module、メインハーネス、ソケット、電球、ウインカーASSYなどです。外付けLoad Equalizerは純正構成部品として掲載されていません。
したがって、実車に外付け抵抗やSignal Stabilizerが見当たらないこと自体は不自然ではありません。LED化が後から行われている場合は、LEDユニット内蔵回路、またはLED化時の配線処理が今回の診断対象になります。
次に実施する「左右分離テスト」
このテストで、両コードが本当に同時発生しているのか、左右を操作した結果それぞれ記録されているのかを切り分けます。
B1121だけか、B1122まで出るかを記録する。| 結果 | 判断 | 次に見る場所 |
|---|---|---|
| 何も操作しなくてもB1121/B1122 | 共通負荷・モジュール側の可能性が高い | Load Equalizer、共通アース、TSSM/HFSMコネクタ |
| 左を使うとB1121のみ | 左側回路の実効負荷不足 | 左前後LED、左出力配線、Equalizer左系統 |
| 右を使うとB1122のみ | 右側回路の実効負荷不足 | 右前後LED、右出力配線、Equalizer右系統 |
| 左だけ使っても両方出る | 共通モジュール/Equalizer側を強く疑う | 後付けモジュールとTSSM/HFSM周辺 |
| 左右それぞれ使うと対応するコードが出る | 両側とも負荷不足 | Load Equalizerの機能喪失が特に疑わしい |
現物点検の順番
| 順位 | 点検箇所 | 確認内容 | 判断 |
|---|---|---|---|
| 1 | Load Equalizer / Signal Stabilizer | メーカー・型番、焦げ、変色、膨れ、異臭、異常発熱、配線抜け | 異常があれば第一候補 |
| 2 | 後付け配線 | エレクトロタップ、ギボシ、圧着端子、半田部、分岐点 | 振動による断続に注意 |
| 3 | アース | 緩み、錆、塗装面への接続、端子腐食 | 左右共通なら特に重要 |
| 4 | 左右LED | ちらつき、消灯、明るさ差、温度依存 | 異常が片側ならその側重点 |
| 5 | TSSM/HFSMコネクタ | 端子押し戻し、緑青、接点圧低下、水分 | 左右共通障害の候補 |
| 6 | TSSM/HFSM本体 | 他を全て除外してから | 最後に判断 |
抵抗式Load Equalizerなら特に見る点
抵抗式はLEDの代わりに電流を消費して、純正電球に近い負荷を作ります。このため動作時に熱を持つタイプがあります。
- シート下で断熱材や配線束に密着していないか
- ケースや抵抗が焦げ・変色していないか
- 端子が熱で変色・硬化していないか
- ハザードを長時間使用した履歴がないか
- 熱くなった後だけ症状が出るか
Web一次情報
| 情報源 | 確認できる内容 | URL |
|---|---|---|
| Harley-Davidson Service Information Portal 2009 Wiring Diagrams | 2009 Dynaを含む純正配線図。 | Harley-Davidson 2009 Wiring Diagrams |
| Harley-Davidson 2009 Dyna Owner's Manual | 2009 Dyna純正オーナーズマニュアル。Security Status Indicator等を収録。 | 2009 Dyna Owner's Manual |
| Custom Dynamics | 2001–2011 DynaのTSSM車で、LED化後のrapid flash+red security keyにSignal Stabilizer/Load EqualizerとTSSM Syncを案内。 | TSSM Rapid Turn Signal Flash |
| NAMZ / Badlands | LED化後のrapid-flashingをLoad Equalizerで補正。一部抵抗式製品の過熱・故障注意も掲載。 | Badlands Load Equalizer Modules |
この段階で交換してはいけない物
TSSM/HFSMをいきなり交換するのはまだ早いです。
現在の情報では、LED化・左右両方の出力DTC・間欠ハイフラという3条件が揃っているため、まず後付けされた負荷補償部品と配線を確認する方が、費用・診断効率ともに優れています。